深呼吸する惑星 感想(ネタバレなし)

    紀伊国屋ホールでの公演も終盤ですね。
    というわけではありませんが、[深呼吸する惑星]の感想です。
    初日を観た時に考えたこと、感じたことがメインです。
    ストーリーなどのネタバレはしてませんが、これから観るという方が読むかどうかは、自己責任でどうぞ。


    ご贔屓さん中心の、ネタバレあり感想は、大千秋楽後にまた書きます。多分。
    「萌えー」とか「もげー」とか「鴻上さんグッジョーブ!」的な、アイタタな感じになりそうだけどね。
    (いつものことだ)。

    今回の感想は真面目なバージョンですよ。





    The Long Goodbye for meeting again .


    最初の告知は【封印解除】の4文字だった。
    しばらくすると、その4文字に【解散公演】の4文字が付け加えられた。
    その時からずっと、ぼんやりと、頭のどこかで考えていた。

    どうしてこの人達は、せっかく築き上げて来たものを、自らの手で終わらせようとするのだろう。
    怖くはないのだろうか。淋しくはないのだろうか。もったいなくはないのだろうか。

    私は、活動休止以前の第三舞台を知らない。
    彼らが東京で快進撃を続けている頃、私は演劇に接する機会なんかまるでない、田舎の子どもだったし。
    私が上京して舞台を見るようになった時には、彼らはその活動を封印して、既に伝説の存在になっていた。

    自分から意識的に劇場に足を運ぶようになって、2回目に見たのが、KOKAMI@network【トランス youth version】だった。
    まだ演劇を見ることに慣れていなかったせいもあるし、この戯曲自体が<物語性>をどこかで拒否していて、解釈はどうとでも出来るせいもあったのだろう。
    観て感じたものを、いざ説明したり感想にしようとすると、するっと逃げて行ってしまって捕まえられず、なんだかうまく言語化できなかった。だから【トランス】の感想は結局書けなかった。

    [シュレーディンガーの猫]みたいなものか? と思ったことは覚えている。
    観測すること自体が対象に影響を与えてしまうから、正確な結果は観測しない状態でしか認識できないというパラドックス。

    【深呼吸する惑星】の感想も、やっぱりいつものようには書けない。
    私は第三舞台を見たことがなく、比較するための情報を持っていないのだから、そもそも語るための言葉を持っていないのかもしれない。

    知った風な口で物事を語りたくはない。
    かといって、「リアルタイムで体験していないから分からない」で済ませてしまうのは、ただの思考停止に思える。


    第三舞台の過去作品からの引用と思しき台詞やお約束で、客席がわっと沸いている場面が何度もあった。彼らを見続けて来た客だけには分かる、リフレイン。
    これは場合によっては、<内輪ウケ>と揶揄される類いのものなのかもしれない。
    私には、【トランス】からの引用からであろう部分しか分からなかったのだけれど、だからといって嫌な気持ちにはならなかった。
    初めて見るはずの舞台なのに、なぜだかとても懐かしいとさえ感じた。

    無理矢理こじつけて分かろうとしなくてもいい。
    ストーリーがどうとか、展開がどうとか、これはそういうことではないのだ。
    これはきっと、10年以上前に、劇団とその客が観ていた光景の再現だ。
    空白の時間を埋めるように、彼らは再会の挨拶をしている。

    「ただいま」
    「おかえり」

    そうやって、役者と客が呼応し合ってる姿を見るのは、とても幸せな気分だった。


    劇団も一つの生命体、有機システムのようなものなのだろう。
    作・演出は頭脳。スタッフは体幹。役者は手足。
    観客の熱狂を胸いっぱいに吸い込んで、そして作品を作り出す。
    放出された作品は、遺伝子情報のように、様々な媒体に記録される。
    観た人達の記憶に。写真に。映像に。活字に。そしてネットのアーカイブに。

    有機体は変容するのが理(ことわり)。そして自分たちの経験を、次の世代に渡して行くのも理。
    あるシステムがその形を失っても、その魂は受け継がれて行く。
    だから、ただ一人客演として呼ばれた、劇団員ではない若い役者が、ここにはいなくてはならなかったのだろう。
    【受け継ぐ者】を象徴する存在として。


    モラトリアムを終わらせることは、大人になるための手続きだ。
    だが通過儀礼は、若者だけの特権ではない。

    もう若くはなくなった彼らが、自らの手で自らの過去に引導を渡す。
    その姿はまるで、多幸感に満ち溢れた生前葬のようだ
    若さと情熱を注ぎ込んで作りあげた劇団という一つのシステムを、同時代を共有して来た客たちの前で、盛大に色鮮やかに、祝祭のような華やかさで終わらせる。
    そのプロセスそのものが、彼らが、そして私たちが、次のフェイズに移行するための手続きなのだろう。



    さようなら。愛しい人達。愛しい時間。
    またどこかで会うために、ここで別れの挨拶をしましょう。
    去り際を間違えた虚しさが、後を追いかけてきてしまわないうちに。

    The show will be over.
    But the life must go on.




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