『ガス人間第1号』舞台版考察 その3

    これで終わりになる予定だったのですが、(以下略)です。

    本当に大丈夫なのだろうか、私。
    でも段々楽しくなってきました。やーもう、私って本当に頭おかしい感じだなあって。

    そういうわけで、またニューロティックに長いんですけど、読んでやろうという方は続きをどうぞ。



    <The truth is in your eyes.>

    あのねえ、私、本当にこの舞台は凄い必死で観たの。こんなに切実な気持ちで舞台を観たのは初めてってくらい、必死だったの。それはなんでかというと、

    (これは生で観て、脳内HDDに焼き付けておかなくちゃだめだあああ。ひょっとしたら後で映像にもなるのかもしれないけど、多分映像ではこぼれおちてしまうことが、ここにはいっぱいありすぎる)

    って思ったからなの。
    で、映像になると何がこぼれてしまうのかというと、それは語られてないし目にも見えないけれど、確かにそこに存在している<何か>なの。


    そもそも、『ガス人間第1号』という名前自体が色々と微妙なモノをはらんでいます。
    私自身は、このタイトル聞いた時に(うわー、すげー面白そー)と本気で思いましたが、それは私の趣味がイロモノ好み 一般的だとは言い難いからだと思います。
    ちなみに私が、今クールで一番面白いと思うドラマはこれで、アニメはこれです。
    まあこんな趣味です。

    でも、多分普通の人はこのタイトルを聞いたら、(なんだそれは)と思うんでしょう?
    そんな『ガス人間』には危険因子がいっぱいです。なぜなら、
    <それを彼に言わせるのは簡単だけど、それを言ったらおしまいだよね>
    的な地雷が、彼の周りにはいっぱい埋まっていたからです。

    でもねえ、大王様はやっぱりお話を作るのがすっごい上手いんだよ。
    「それは踏んじゃだめだろ」的な地雷台詞は全く書いてなかったよ。もう、それを避けてるのも観客に気づかせないくらいに、キレイに処理してた。だから私はもの凄くこのストーリーにのめり込めた。
    これが感性の鈍い凡百の脚本家だったら、もの凄く無造作に地雷台詞を書いちゃって、私を怒らせてたと思うんだ。

    では、地雷ワードとは一体どのようなものなのでしょう? また勝手に考えてみました。


    地雷ワードその1:「俺はガス人間第1号だ」

    はい、アウトー。
    あ、もうこれはダメです。本当にダメです。主役にこんなこと高らかに言わせちゃダメだ。
    なんでこれがダメなのかと言ったら、

    『人は自分で自分を定義することは出来ない』からです。

    意味が分かりにくいですか? じゃあ違う例を挙げてみます。

    「私って●●な人だし~」
    って言う人の●●の部分は、他人から見ると「どこが?」と思われるようなものだったりすることがほとんどですね。

    「わ~た~し~は~宇~宙~人~だ~」
    これではギャグです。しかもどうやら、今時のお子様にも通じるらしいギャグです。この間知り合いの子が上記の台詞を、咽を叩いて声を震わせて言いながら、一人でゲラゲラ笑っていたので、
    (わあ。これ、今でも通じるんだ)と思い、つい、
    「元ネタ何?」って聞いてしまいましたが、お子様は意味が分からなかったようで、きょとんとしてました。まあ相手は幼稚園児でしたからね。

    自分で名乗りをあげるのは凄く簡単。でもそれ言っちゃったら、とっても子ども向け特撮みたいになってしまいます。これでは、『大人のための寓話』として成立しません。


    橋本君は、自分で自分のことを『ガス人間』だなんて言い出したわけじゃないですよ。
    前も書いたけど、彼は自分のことを説明することはなかったの。
    確か橋本君がその言葉を口にしたのは、取調室のシーン。
    『かつてのバンド仲間を殺したのは自分だ』ということを証明するために、刑事や記者達の前でガス化して、その異形の力を見せて。
    その時に後から飛び込んできた岡本刑事が、ガスの専門家に向かって言った「黙れこのガス人間!」って、台詞を聞いて初めて、

    「いいねそれ。俺もらっていい?」

    という形で、橋本君はそのワードを口にしていたわけです。

    つまりそれは『自称』じゃなくて『自嘲』。狂気に満ちた瞳で自分を嘲笑いながら、口にしていた哀しい言葉。

    映画版のガス人間は、元々持っていたコンプレックスの上に、異形の力を得たことによる恍惚が歪んで乗っかっちゃったことで、怪人化してたんだけど。
    舞台版のガス人間、橋本にとって、その異形の力は全く役になんか立たなくて、ただ彼にとってのコンプレックスを増やしただけだったから、彼は人間のまま、静かにゆっくりとおかしくなってしまった。

    「俺は人間じゃないんだから、人間の作った法律に従う必要はないんだよ」

    映画版でも舞台版でも、ほとんど同じ台詞をガス人間は口にしていたんだけど、それが持つ意味合いは全く違っていた。

    映画版のガス人間にとってそれは、万能感と優越感と選民意識がこもっていた言葉だったけど。
    舞台版のガス人間の言葉に含まれていたのは、人であることを失ったことの苦しみと怒りと哀しみだった。

    あーもう、上手い。これはほんっとうに上手い。大王様ってホントに凄いと思った。
    同じ台詞なのに、その台詞が持つ意味合いを、綺麗に変換させちゃってた。



    自分の存在を決めることは、自分一人では出来ないんだよ。
    自分が何者なのかを決めるのは、自分じゃなくて近しい他者なの。
    人は他者の目に映っている自分の姿を見て、自分がどんな風に見えているのかを確かめながらでないと、自分の存在や立ち位置を決めていくことなんて出来ないの。

    だから橋本君は壊れていったんだよ。
    人ではないものになってしまってからも、彼女のことをずっと見つめていたのに、彼女の瞳に映る自分を見ようとはしなかったから。
    彼女の瞳をのぞいた時に、もしそこに映る自分の姿が、恐怖や侮蔑や嫌悪に彩られていたら、その瞬間に彼は最後の光も失ってしまうから。

    だから、彼女を遠くから見ていることしか出来なかった。
    人であるよすがを失って、自分の居場所も分からなくなって。そんな状態が何年も続いて。
    『彼女がまた歌う』ことが自分の夢なのか、彼女の希望なのかも、もう区別が出来なくなってしまって。
    彼女のために何も出来ない自分が悔しくて。
    見ていることしか出来ない自分が耐えられなくなって。
    だから、彼は彼女の敵を排除していった。
    それしかもう自分には出来ないんだというところまで、一人で自分を追いつめていってしまったから。



    地雷ワードその2:「好きだ。愛してる」

    はい、これもダメー。全然ダメー。こんな陳腐でチープで怠惰な言葉で、何かを語った気になってはいけません。言ったらそこで思考停止です。試合終了です。
    というか、そんな手抜きは私が許さん! 
    そんな言葉をありがたがるスイーツ脳なぞ持ち合わせとらんわっ!
    愛を語るなら、そんな簡単な言葉じゃなくて、行動で示せ。安直な言葉に頼らずに、その想いを見せなさいっ。


    だから言いたい。これは何度でも言っておきたい。

    『何かを声高に語らせることよりも、語らせないでおいておくこと』の方が絶対大事だっ!
    語らないけど分からせちゃうのがカッコいいんだ。
    背中で語れる役者に、背中で語ってもらうのは、とても正しいことなんだ。
    それは、抑制的で破滅的でロマンティックでハードボイルドでとっても美しいことなんだと。
    私はそう思うんですっ! 

    なんてったって男の美学は痩せ我慢ですから。
    文字通り橋本君たら、痩せる程我慢してたじゃない。
    って、あらやだ私ったら、また上手いこと言っちゃった?(言ってません)。

    こうやって書いてるうちに、何故私がこの舞台にここまでのめり込んでしまったのか、その理由が段々分かってきました。
    自分でも気づかないうちに、私の脳内はもの凄い勢いで退行してたんです。
    多分、今で言うところの中2病真っ盛りくらいの状態に、どうやらなっていたらしいんです。

    中学時代なんて、クライマックスに脳が煮えていた頃だ。今もヒドいけど、当時は本当に手がつけられないくらい色々なことがヒドかった。あの頃、自分が家や学校で何をしてたかなんてろくに覚えてないんだけど、どんな小説やマンガを読んでたかは凄く克明に覚えてるんだ。しかも無駄に記憶力が良かったため、一度読んだ本の内容は忘れないので、いつも頭の中がウルサかった。今考えると、かなり病的だったんじゃないかなあ。あははっ(笑えねえ)。

    そして、マンガや小説を読みふけっては、『どういう男がカッコいいのか』とか、『男の美学とは何なのか』とか、そんなことばかりを考えていました。というか、そんなことしか考えてませんでした。
    え? 理由?
    そんなのオタクだったからに決まってんだろっ! 

    つまりオタクは宿痾だから治らないと、そういうことだったわけですね。
    我ながら凄いよなあ。××年たっても、全然趣味嗜好が変わってないんだからなあ。(いやなオチだ)。

    という、わけの分からない結論に達したところで、オタクの義務として、これもしつこく言っておきます。

    大王様、お願い。本当にこの高橋一生君と中村中さんで、また舞台やってください。
    ドタバタコメディでもラブコメでもファンタジーでも何でもいいです。
    なんだったら、

    『ツンデレ女王と、顔は笑ってるんだけど目が笑ってない腹黒な騎士の話』

    で、いいじゃないですか。→(過去記事参照)
    自分で言うのもなんですけど、これはかなりの鉄板設定だと思いますよ。これなら演劇ファンだけじゃなくて、アニオタとかラノベオタも釣れるかもしれませんよ(待てコラ)。


    というわけで。
    「あとちょっとだけ続くんじゃ」って、どこかの仙人様みたいなことを言いながら、ひょっとしたら続く? かも。

    関連記事
    スポンサーサイト
    Comment
    拍手レス:11/29 00:57にコメントくださった方へ
    過分に褒めていただいて、ありがとうございます(照)

    うーん。もうほとんど連載しているようなものですよね。ホントなんでここまで分析したくなってしまったのか。きっと深読み好きオタクの性ですねー(遠い目)。
    こういうのを語れるオフでの知り合いはいないので、共感したというコメントをもらえると嬉しいです。こちらこそ元気になれました。

    拍手レス:11/28 02:27にコメントくださった方へ
    初コメントありがとうございます。
    オタクの戯言にお付き合いいただいていたようで、恐縮ですし、同意してもらって嬉しいです。

    やっぱり、純度の高いものを見ると、自分も純化されて、普段は隠しているオタクテイストが出てきてしまうとか、そういうことなのでしょうか?
    うわあ。相変わらずいやなオチです。すみません。
    感想はいくら何でもそろそろ終わりにしたいです。いい加減恥ずかしくなってきました。もし無事に書き終わったら、おヒマな時にでも読んでやってください。
    Trackback
    Trackback URL
    Comment Form
    管理者にだけ表示を許可する
    プロフィール

    美夜(miya)

    Author:美夜(miya)
    ・TV・舞台・本などの感想置き場。
    内容は、その時ハマっている物次第。
    規則性はあまりなし。

    ・記事へのリンクをされる場合は、
    該当記事のURLを明記してください。
    無断引用・転載はご遠慮ください。

    <管理人別館>
    木更津Honty Tonk
    『木更津キャッツアイ』中心感想サイト

    Innocent Accomplices
    『相棒』感想サイト
    (1st.~4th.seasonまで)

    ・ツイッター: @miyabreaction
    (過去つぶやきまとめ)
    ついろぐ

    ・連絡はこちらからよろしくお願いします↓
    メールフォーム

    最近の記事+コメント
    カテゴリー
    ツイッター
    オススメ
    過去ログ v Co リバース
    ブログ内検索
    ブログパーツ

    美夜の最近読んだ本

    リンク