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    『ガス人間第1号』舞台版考察

    そういうわけで、しつこくネタバレ考察です。
    ガス人間と高橋一生君と舞台の構成について、まだ語っちゃうよ!
    上演期間中はネタバレしないように気をつけて書いていた反動なのか、自分でも笑える程長い。どんだけ書くのか自分。
    笑いを通り越して、こんな自分がちょっと怖くなってきた。どんだけ粘着なのか。
    もういい。せっかく半年分は見たんだから、半年分は書いておけばいいよ、自分(ちょっとヤケ)。
    妄想とか深読み成分も、いつもの3割増くらいになってます。
    それでもいいという人は、どうぞ。
    長いのでたたみます。


    <寡黙な唇、雄弁な背中>

    私に限らず、多くの人がブログの感想等で書いていたことですが、この舞台のガス人間こと橋本君は、とにかくせつないのです。
    目がせつない。表情がせつない。少しずつ狂気を開放していって、最後には怒りを爆発させる姿すらもせつない。泣きだしそうな声で千代に呼びかける姿なんて、そりゃあもうせつないに決まっている。
    立ってるだけで! 後ろ姿だけで! 最後にはそこにいるだけでせつなくって、もう何が何だか分からない!
    まさにせつなさの絨毯爆撃!
    何これ。一体どういう魔法?

    いやあ、あれにはびっくりした。ほんとうにびっくりした。

    トータルで見ると、彼の出番はそこまで多くないのです。【第1幕】ではちらちら出てきますが顔は見えなくて、顔出し登場は【1幕】の最後の方。
    その代わり【2幕】に入ったとたん、客席に向かって音も立てずに『せつなさ爆弾』放り投げてきて、その結果私がどんな状態になったのかは、もう過去記事に色々書いたからここでは書かないけど、まあ何だか色々と大変なことになりました(さわやかな笑顔で)。

    橋本君は、印象的な台詞は多いんだけど、台詞量が多いわけでもないんだよ。
    ラストシーンなんか、ずっと背中だけで演技してるの。千代がライターをつける音で、橋本君が頭を少しだけ動かした後、そのあとさらに深く千代を抱きしめるという仕草だけで、もう全てを語っちゃってるの。もの凄く静謐で繊細な芝居。あれは本当に凄いと思った。しびれたよ、体が。文字通りの意味で。

    それでも、「ガス人間の出番少ないじゃないか」みたいな人様の感想も読んだので、

    (あれ以上彼の出番って増やせるかあ? 映画版とストーリーの流れはほとんど変わらないのに。じゃあ、京子さんが千代さんに、橋本君の手紙の内容を伝えるシーンを、橋本君自身に言ってもらったらどうだろう?)

    そう思って、脳内でシミュレートしてみました。

    (・・・・・・考え中・・・・・)

    ・・・・なんだか『2時間サスペンスドラマ』みたいになっちゃったよ。
    だめだだめだ。こんなのはダメだ。これじゃあ台無し。本当に興ざめ。却下だ却下。
    『2サス』の何が変なのかっていったら、犯人が最後に自分自身で懇切丁寧に台詞で全てを説明しちゃうからでしょう。
    ミステリ小説ならそれでいいよ。文字で表現するしかないんだし、地の文に溶け込ませて犯人の動機やトリックとかを説明することには何の違和感もないもん。というか、小説だったら、そういうことはきっちり書いてもらわないと読者には分からん。

    でも、舞台は言葉だけじゃなく、役者の仕草とか、舞台装置とか、音楽とか、観客自身の想像力に委ねるとか、非言語的な部分でも色々なことを観客に伝えられる総合芸術なんだから、台詞で全部を説明しようとするとかえって安っぽくなっちゃうんだよ。

    じゃあ、ガス人間が中々出てこない【第一幕】で何が行われていたのかと言うと、

    『ガス人間とは何者で、一体どこから来て、どこに行くのか?』

    ということを、刑事や記者や専門家や母親達が、『捜査・推理・証言』の形で、観客に説明していたわけです。
    どうしてそういう構成なのかというと、それはやっぱり、ガス人間が説明的な台詞を言わなくてもすむようにじゃないかなあ、と私は深読みしてしまいました。

    『ガス人間』の説明って、舞台版では第三者の証言という形でしか語られることってなかったのね。橋本君自身が、自分がガス人間になった経緯を語ることってなかった(映画では、ガス人間水野が自分で回想シーンを交えて説明してた)。

    証言者の一人である橋本の【母親】は、最後に【母親じゃなかった】ことが明らかになって、彼女の証言の信憑性がなくなってしまったので、橋本君が人体実験に参加した理由が、本当に千代を助けるためのお金を捻出するためだけだったのかも、本当のところは良く分からなくなってしまいました。

    彼がガス人間になった理由を推測することは出来る。でも、断定は出来ない。
    その状況も理屈も分かる。でも、彼が実験に参加した真の動機は分からない。

    「僕はもう、あなたのためにしか生きていないんです」

    その言葉の通りに、彼は彼女への想いだけを語って、彼女のためだけに自分の手も汚して、消失点に向かって駆け抜けていってしまった。

    彼は全然説明的じゃなかった。でも、そのことが彼の存在の純粋性と、現実から微妙に切り離された異化作用を醸し出していたのだと思う。
    大王様は、説明とか言い訳とか、そういう余計なことは一切含まれない、純度の高い言葉だけを選んで橋本君に与えていて。
    そして高橋一生君が、とてもクラシカルで端整な芝居にのせて、その言葉達を発していたから。
    だから橋本君は、ただひたすら繊細で純粋で哀しくてせつない存在になっていたんだと思う。


    『神話』とか『民話』とか『童話』って、説明しなかったり、投げっぱなしだったり、意味が分からない余白の部分があるものでしょう。
    その余白の部分には、それを見た人間がそれぞれに寓意を読み取って、自分なりの物語を完成させなさいってことなんだと思う。

    大王様も、ガス人間の行動について全ては説明しないけれど、
    『そこに隠された寓意は君たちが読み取りなさい』
    っていう含みをそこに持たせていたのだと思う。

    はいっ。分かりましたっ。今日も私は明るく元気に妄想しますっ!(はい?)

    というわけで、橋本君がなんで人外になってしまうような人体実験に参加してしまったのか、理由を考えてみました。勝手に。
    もちろん千代さんを助けるためっていうのはあったと思うけど、そこには彼自身のメリットもあったんじゃないのかなあ。
    『痩せ薬のモニターやってくれ』っていう風に、会社に騙されて応じちゃったとかさ。

    彼は元々『お相撲さんみたいに太っている自分』に、結構なコンプレックスを感じていたんじゃないかなあ。
    バンドのローディーやってて、メンバーの荷物運びなんかやってた頃にさ。

    「ダメですよ、僕に触っちゃ。僕汗っかきだから、千代さんの手が汚れちゃいます」

    的なエピソードがあったことは容易に想像しちゃうよね。
    美しい彼女のことを好きになって、彼女を前にして、橋本君は一人で勝手に引け目を感じていた可能性を考えていたよ。

    僕がもっと痩せれば。
    少なくとも相手に不快感を与えないくらいの見た目になれれば。
    自分に自信が持てるようになれれば。
    もっと彼女に近づける。
    彼女を好きでいることに、こんなに不安を感じなくてもすむ。


    みたいなっ! 

    そんないじらしいことを橋本君は考えていたんじゃないのか? 
    どうですか? このシチュエーションは萌えませんか? 私は萌えます。
    私の妄想力をもってすれば、これくらい脳内で一生君ヴォイスで再生することなど、雑作もないこと。はははははっ!
    (もう自分でもツッコみきれないレベルに、何かが達してきた気がする)

    私のこの手の妄想は常にオートマティックです。でも、面白い話じゃなければ、そこに妄想をのっけることなんて出来ないのよ。

    だってさ、そうとでも考えなければ、ラストで、

    「私を抱きしめて」
    って千代さんに言われて、

    「そんなことが・・・僕に・・・出来ますか?」

    なんて、疑問形で答えたりはしないと思うんだ。
    そうか。そう返しちゃうのか。「いいんですか」でも「じゃあ、さっそく」でもないんだ(当たり前だ)

    この台詞聞いて私は、
    (この人は本当に彼女のことを想い過ぎて、でも自分に自信がないから、それが一方通行なのは当たり前だと思ってしまっていて、愛が返って来るなんて考えたこともなくて、もう自分でも何をどうしたらいいのか、わけが分からなくなっちゃってたんだなあ)
    と思ったもの。

    大王様の紡ぐ言葉は、とても重層的だ。ほんの一言の台詞なのに、その一言の奥に、それを発している人物の性格や行動の背景が立ち上って来る。
    私は大王様の舞台を生で見るのは初めてだったんだけど、本当に言葉の選び方が繊細で、聞いててイヤな気分になる台詞がなかった。

    (正確に言うと、『ガス人間』前にNHKで放送されたAGAPE storeの2、3を見たんだけど、録画できなくて半分くらいしか見られなくって「いかにも舞台らしい舞台」という印象しかなかった)


    噂に寄ると、TVカメラが入ってた回があるとか。テレビ放送はあるかもしれないとか。是非映像でも見たいですっ!(出来ればDVDにもして欲しい)。
    でも再演するなら・・・同キャストでもいいけど、いっそのこと全部別キャストにして、ストーリーも再構成して、別物の話にしちゃってもいいのかなあ、という気もしています。

    これはもちろん、ネガティブな意味では全くなくって。

    高橋一生君の演技の静かな峻烈さと、中村中さんの歌の凄みから受けた衝撃が、あまりにも私にとっては強すぎて。

    再演しても、誰がやっても、あのファーストインパクトを超えることはない気がします。あくまでも私の中では、ですが。

    というわけで、やるんだったら、あの二人での新作舞台を強く希望しますっ!
    もう希望を書くだけならタダだから、こういうのは何度でも書いておくことにしてるんだ。私は言霊の力を信じているからね。


    そして、感想はまだ続いてしまう。
    あ、あと1つ書けば、すっきりする気がする。
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    Comment
    拍手レス:11/17 02:56にコメントくださった方へ
    どうもお褒めいただきありがとうございます。
    久々に語りがいのある作品に出会えたので、自分でも頭がおかしいと思う程書いてしまいましたが、まだ書ききれてません。
    今週中にはもう1つ記事を書きたいと思いますので、良かったらまた読んでください。

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