新旧ガス人間対決(嘘)

    『ガス人間第1号』映画版を見たので、舞台版とも比較した感想を書きました。
    当然どちらもネタバレしまくりです。
    所々馬鹿っぽいかもしれませんが、まあその辺りは適当にスルーで。

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    三橋達也八千草薫

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    <'60の男女観、'00の男女観>

    映画も面白かった。半世紀近く前の映画とは思えないくらい、ストーリーも映像もレベル高かった。大人向けの豪奢なSFサスペンスホラーだった。ガス人間がガス化するシーンなんか、今見てもほとんど違和感を感じない。凄く良く出来てる。

    でも、この映画のガス人間とヒロインのキャラ設定を、そのまま現代の舞台に持ってくることは確かに出来ないなと思った。

    映画版のガス人間=水野は、異形の力を得たことで万能感に満ちあふれちゃって、その力と金とで惚れた女を支配しようとする強権的な男だし。
    ヒロインの藤千代は、「わたくし、何にも存じませんの」って風情で、無力で非力な女に見えるけど、その作り物のように綺麗な顔の下では何を考えているのか今ひとつ分からなくて、結果的に男を破滅に導くファムファタールだった。

    これは当時は当たり前の男女観だったんだろう。
    男はえらくて、女はその後ろを黙ってついていきますよ的な、ナチュラルな男尊女卑と。
    「そんなに私のことが好きなんですか。じゃあもう仕方ないですね。一緒に死にましょう」的な論理の飛躍と帰結。
    なんか太宰の世界観っぽい。
     
    しかし、これは現代では受け入れられない。

    『美人を自分のモノにしたい。美人に振り回されたい。それが出来るなら破滅してもかまわない』

    その願望は、今も昔も変わらない殿方の夢だろうから、男性にはこれでも通じると思いますが。
    でもこのままでは、女性にはまず受けない。シャレの通じないフェミ的思想の持ち主だと多分怒る。

    だから大王様は、そういう誤解を避けるために、映画の大筋は踏襲しつつも、舞台版では主役二人のキャラは代えてきたのでしょう。

    『凄くいびつで分かりにくいけど、それでもこの映画の男女の間に流れていたのは、確かに愛ではあるんだよ』

    ということが、舞台版ではもっと分かりやすい形に翻訳されて提示されてた。

    異形の力を得た怪人を、純粋すぎて境界を越えてしまった人間に。
    ファムファタールを聖母に。

    そうした置き換えを行うことで、『大人のためのSFサスペンスホラー』を、『大人のための寓話』に上手いこと変換していたなあと思いました。


    <循環する狂気>

    映画のラストは、藤千代が水野と無理心中をし、爆発炎上する劇場から、半死半生のガス人間がはい出してきて、絶命するシーンで『終』。
    こ、こわい。この絵面はすごく怖い。子どもの頃見てたら確実にトラウマ化すること間違いなしの恐怖映像だった。

    で、舞台版も爆発オチかと思っていたら、まさかの2段オチが待っていました。

    いやあ、舞台版のあのどんでん返しにはびっくりしたよね。
    爆発オチかと思っていたら、

    2号さんオチだったとはね!
    (はいそこで『さん』はつけない)

    やっぱり大王様みたいに頭の良すぎる人って、
    『なんかひねりを入れなくては』
    的な強迫観念があるんだろうなあ、と思いました。
    あと、あれは東宝特撮映画に関わってきた偉大なる先人達に対するリスペクトでもあるんだろうから、これはこれでアリかなあとは思いましたが。

    まあ、私の中では、伊原さんの台詞で終わったことになってるし、もう橋本君と千代さんには何の関わりのない世界の出来事だから、二人が彼岸の彼方に消えた後に、マッドサイエンティストが暗躍しようが、もうそんなのはどうでもいいや。
    2号さんでも3号さんでも、南極1号でも好きに作ればいいよ。
    どうせ作るんだったら、南極2号とか空気人形とか作った方が、世のため人のため殿方のためになりそうだけどな。

    ・・・もう、私ったらさいてーね。なんで自重できなかったの、そのネタ。
    すみません。でも思いついたので、どうしても言いたくなってしまいました。
    あまつさえ、ちょっと上手いことを言った気にすらなってしまいました。
    本当にすみません。


    <TRICKS! GIMMICKS!! EFFECTS!!!>

    映画はまだ分かるけど、どうやって舞台でガス人間を表現するんだろう、って思ってたんですが、本当にスモークでやってたので、びっくりしました。
    すげー。あれすげー。どうやってんの?
    橋本君の腕から、なんか輪っかみたいなスモークが、バシュって出てきたよ、バシュって。
    うーわー。いいなあ。私も出してみたい。あのかめはめ波みたいなやつ。

    ・・・おまえ、あの超シリアスなシーンでそんなことを考えてたのかよ。
    ううん。見てる時はそれどころじゃなかった。
    家に帰ってきて反芻して、あれどういう仕掛けなのかなあ、って考えてたら、つい・・・。

    私ああいう、トリッキーなものが凄く好きなの。だからああいう仕掛けは、無条件でわくわくする。

    高橋一生君はトークショーで、「ガス出せるのが楽しかった。ずっとやってたい」って言ってました。
    でもあれ、目にしみたりしなかったのかなあ?
    多分腰か背中にギミックを取り付けてたんだと思うんだけど、それつけたまま動いたり飛び降りたり演技したりしてるんだから、役者ってすげーなーって思いました。


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    Comment
    Re:
    私は別に、『時代劇』や『特撮』というジャンル自体が好きなわけじゃないんですよ。
    自分にとって面白そうな話なら、『ミステリ』でも『刑事もの』でも『ジュブナイル』でも『SF』でも『ホラー』でも『スプラッタ』でも、ジャンルは問わずなんでも見るってだけです。
    ドラマ好きってわけでもないんだと思います。量だけなら、映像よりも小説やマンガの方を多く見てますし、広く浅くじゃなくて、気に入ったものだけを、狭く深くしつこくしつこく鑑賞するタイプなんで、1クールに1つなにかお気に入りがあれば十分なんです。

    先月はひたすら『ガス人間』の舞台にかまけてたし、今月は『ドグちゃん』と『昼ドラ』があるので、もうキャパはいっぱいですね。
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    11/10 19時台にコメントくださった方へのレスです
    どうもお久しぶりです。

    八千草さんは確かに美しかったです。しかしあそこまで整ってると、人間らしさって感じないものですね。

    『マタンゴ』は見ようと思ってます。映画好きの家人に聞いたら、「凄い不気味」とのことだったし、ガス人間の舞台版に出てたんですよ。『マタンゴ』のヒロイン。齢を重ねられても、美しい人は美しいと思いました。

    「大魔神」はなんかリメイクやるとか。
    http://www.dm-kanon.com/
    昔の特撮少年が大人になって、自分でドラマとか作るようになったせいか、最近増えましたね、こういうの。ご存知かもしれませんが、プロデューサーが以前某ライダーでファンの阿鼻叫喚を巻き起こした人物(・・・)なので、今度は下手打たないで欲しいと思っています。

    「仁」は評判いいですね。『ドグちゃん』を放送してくれないT●Sに腹を立てていたので、見てなかったのですが。「窪田が成長したら鉄矢になってしまった!」って某所の書き込み見て笑ってしまいました。

    11/10 16時台にコメントくださった方へのレスです
    再コメントありがとうございます。

    私の目には、千代さんは人間っぽく見えなくて、人間じゃないのに男性にこういう風に愛されるんだったら、きっとこれは聖母なんだろう、という風に理解しました。

    こういうのはやっぱり、読解力の問題というよりも、見ている人の趣味指向によって捉え方が違ってくるものなので、同じものを見ていて感想が違っても、不思議はないんじゃないでしょうか。

    私のことを言えば、私は『恋愛もの』は基本的にダメで、それは何故かと言うと、私は女のオンナ的な部分を見させられるのがイヤなんです。私は自分の女性性の部分を嫌悪していて、『自分が女であることを理解はしているけど、納得はしていない』というようなところがあります。多分そのせいで、女が男の前でメス化女をアピールしているのを見ると、生々しくて気持ち悪いと思ってしまうんです。

    中村さんくらいに、超越的で神秘的な存在だと、『恋愛もの』にありがちなストレスを感じずに見られて良かったです。
    だから、橋本君と千代さんは『恋愛』をしていたわけじゃあないような気がします。『恋愛』だったら、多分私見ていて凄いイライラしたと思うから。
    そのあたりのことも、後日記事に書こうかと思ってます。しかしいつになることやら。出来れば今月中になんとか。

    『死体のメタファー』については、私のこじつけと深読みと妄想なだけかもしれないので、あまり期待はしないでください。私の言ってることの9割はオタクの妄想ですから。

    私昔学生マジックをやってたので、橋本君の輪っかのしかけについては、分かるような気もするし分からないような気もしますが、こういうのは知らない方が絶対幸せなので、深くは考えません。


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    *拍手コメレス: 11/09 12:51にコメントくださった方へ
    コメントありがとうございます。また同意してもらえて嬉しいです。

    橋本君は確かに弱い人なのかもしれないけど、私は人が弱いのは仕方がないことだと思ってます。どう考えても、男より女の方が強いものですし。
    それに、あそこまで追いつめられている人に、「強くなれ」なんて私は言えないです。
    まあ、そのあたりは個人の趣味の問題になるんでしょうけどね。
    私は、ヘタレ男子が、本人なりにどうにかしようとしてじたばたしている姿に、愛を感じてしまうタイプなので。

    ↑にもちょっと書きましたけど、舞台版では、ガス人間と千代は「寓話」とか「おとぎ話」の登場人物のように、観念的な描かれ方をしているので、現実ルールであの2人を捉えようとすると、しっくりこないかもしれません。橋本君が積み重ねてきた死体にしても、そこに別のメタファーを感じることは出来なくもないですし。
    そのあたりのことは、後日また考察してみようと思います。

    自分でもまだ書くの? って感じですけど、すっきりするまでは書きますよ。あと2記事くらいは書けそうです。ほんと私ってしつこいですね。

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